世界が望んだ忘れ物。だけど。
「それ」はベネの片隅に捨てられ、震えていました。
長年、ご主人様に大事に育てられてきたであろう「それ」は、突然居場所が無くなってしまって寂しそうな表情を浮かべていました。
目が合った瞬間、私は視線を逸らそうとしました。ごめん、私には飼えな………
「きゅーん…」
か細い鳴き声。まるで「僕の事を忘れないで…」と訴えているようにも感じました。
視線は逸らせず、しゃがみこんで数分の間自問自答を繰り返しました。
この先、「それ」を飼って育てられるだけの気持ちがあるか。
この先、「それ」を飼った事を後悔しないでいられるか。
この先、「それ」と共にある事を誇りに思えるか。
険しい道かもしれない。途中で挫けるかもしれない。
それでも、それでも、拾った事を後悔するより、拾わなかった事を後悔する方が数百倍悲しい。
私は決意しました。「それ」にそっと手を伸ばして、メインとして迎え入れる事を。
名前を変えるつもりは無かったのですが、ついカッとなってやった。反省は全くしていない。